相対時間論(2)忘却の嵐
タマ「100歳の1年は1歳の1/100、99歳だと1/99、カゲロウなみのはかなさですね」
ジル「カゲロウは1日で寿命が尽きようが1週間生きながらえようが、仮に100年生きた
としても、全てが1/1でしかない。人間は経験値の蓄積があるので10歳で3、100歳
で5という数値になるだけで、生まれてから100歳になるまで脳が経験値を蓄積する
脳が活動していなければカゲロウと同じく1のままということニャ」
ミケ「100歳で5、10歳で3という人生の数値が正しいという臨床例はあるんです
か?」
ジル「100歳の人間の認知症が進行して(忘却の嵐)に見舞われると、10歳以降に蓄積
された人生の記憶などいともたやすく吹き飛ばされ子供返りしてしまうのニャ」
タマ「なるほど……認知症にならない方法ってあるんですか?」
ジル「わからないニャ」
タマ「わからないんですか?」
ジル「認知症になってからの症状を前もってコントロールする方法ならわかるのニャ」
ミケ「コントロールって、何を?」
ジル「認知症になって人生の記憶が子供時代に戻ることを可とするか否とするかにもよ
るニャ」
ミケ「社会的側面から見ても、子供時代に戻ってしまうのは避けたいと思います」
ジル「それならば、分子を大きくするのニャ」
ミケ・タマ「???」
ジル「認知症になっても子供返りはしたくないと考える99歳のものがいたとすれば、
100歳になるまでの1/100という数値の分子を大きくするのニャ」
ジル「今じゃから可能なことなのだ。昔なら99歳が何かをするにも、体力的な制限もあ
り、経験値を増やすことなど言うに及ばず、平穏に1日1日を過ごせれば良しとしてい
ただろう。99歳は極端とも思えるが、2時間程度パソコン画面に向かう体力と使いこ
なす気力があれば、不可能ではない。あらゆるものに接続可能なインターネットを介
して、その後の1年に蓄積される数値を1/100から20/100欲をいえば50/100と、分子を
可能な限り大きくするに越したことはないのニャ」
ミケ「それで、認知症になってからの子供返りを防げるのですか?」
ジル「とはいっても、99歳以降の記憶は守られるが、子供時代から99歳になるまでの記
憶は(忘却の嵐)によって吹き飛ばされてしまうのニャ」
タマ「それって認知症予防には効果がないんですか?」
ジル「わからないのニャ」