ネットノマド
ジル「ワシが豪邸に暮らしていることについて、お前らはどう考える?」
タマ「むさくるしいよりも、居心地がいいに越したことないです」
ジル「1980年代のアカデミックには、ノマドであるワシがちゃんとした居を構えている
ことに合点がいかなかったようなのニャ」
ミケ「ノマドは定住すべきでないということですね?」
ジル「ツリー(リアル)とリゾーム(インターネット)とプラトー(ヴァーチャル)の
関係性の未来について、その時点でのワシの説明には不十分なところもあって、アカ
デミックはツリーとプラトーを現実世界での関係性として解釈しようとしておったの
ニャ」
ミケ「仮想世界ではなく、現実世界のプラトーを渡り歩く、みたいなですか?」
タマ「絶対に定住は無理ですね。ボヘミアン?」
ジル「ワシの著書の中でも、ガタリとの共著(千のプラトー)だけは、アカデミックで
はなくノマド哲学というべきもので、未来を想像で語っている部分が多く、いうなれ
ミケ「要するに、参照しうる文献がないということですね」
ジル「アカデミックは新たに創出されつつある公理系の理解が苦手なのニャ。(千のプ
ラトーの原書)を手にしたアカデミックがまず最初に参照するのは(千のプラトー)
について、Aが考察した文献であり、Aの文献にはまたBの考察が引用されておる」
タマ「引用のたらい回し……それがアカデミックのやり方かー‼」
ジル「参照する先人たちが存在しないので、仕方ないのニャ」
タマ「じゃあ、ノマドが(千のプラトー)について考察した本を出版すればいいんです
ね」
ジル「ノマドの哲学者を知らないのニャ」
ミケ「ノマドは、芸術とか未来志向の科学とかには興味を持っても、未来志向の哲学に
は興味を示さないんですね」
ジル「芸術や科学においても、アカデミックの壁というのが存在するが、哲学ともなれ
ばノマドが入り込む隙は0に等しいのニャ」
ミケ「今後、(千のプラトー)の正確な解釈が必要とされるんじゃないですか?師匠、現代版を執筆してくださいよ」
ジル「嫌じゃ‼」
ミケ「じゃあ、私がやりますよ」
タマ「いやいや、僕がやりますよ」
ジル「やっぱりワシがやるのニャ」
ミケ・タマ「どうぞどうぞ‼」