D-TK10というスピーカー(3)

2週間後

ミケ・タマ「おじゃまします」

ジル「そこにある箱をリビングまで運んでくれるかニャ」

タマ「結構重いんですけど」

ジル「だから呼んだのニャ」

ミケ「そのためにですか?」

ジル「こっちじゃこっちじゃ」

タマ「あれっ、アンプがなくなってますよ」

ジル「売ったのにゃ」

ミケ「じゃ、この箱は?」

ジル「買ったのニャ」

タマ「なんで?前のも気に入ってたのに」

ジル「インターネットの記事を見て、このスピーカーと相性の良い気がしたのニャ」

ミケ「早くつないで聴いてみましょうよ」

タマ「箱にプライマーi35と書いてますけど」

ミケ「前のは何でしたっけ?」

ジル「EXOGALのionとcomet。ああ、それにはこれをつなぐのニャ」

タマ「ちっちゃいですね。何ですか?」

ジル「CHORDというメーカーのQutestというDAC(DAコンバーター)ニャ」

ミケ「パソコンに保存した音楽を、デジタルのままUSBで出力したものを、アナログに

 変換するんですよね」

10分後

タマ「つなぎ終わりました。このふっといスピーカーケーブルはどこの製品ですか?」

ジル「ゾノトーンのGranster 7700αという。前に聴いたのはカラヤンブラームス

 響曲第1番だったニャ」

「ダンダンダンダン‼」

ミケ「少し音が籠っているようですが?」

ジル「初めて電源を入れて、暖まってもいないし……しばらくすれば本領を発揮す

 るはずニャ」

ミケ「このちっちゃいスピーカーはいくらでしたっけ?」

ジル「中古なので、半額……75000円なのニャ」

タマ「スピーカーケーブルは?」

ジル「50000円」

ミケ「前のアンプとDACは?」

ジル「700000円」

タマ「今のは?」

ジル「少し安いかニャ」

ミケ「電源回りは?」

ジル「200000円くらいニャ」

ミケ「元値が150000円のスピーカーに、オーバースペックじゃないんですか?」

ジル「ウィルソン・オーディオというメーカーの10000000円以上のスピーカーでも、

 このスピーカーよりも低廉な価格の周辺機器でまともな音を出すのは可能なのニャ。

 ただ、このスピーカーに限っては、まともに鳴らせる最低限のシステムがこれなのニ

 ャ」

タマ「一千万円!!」

ジル「ホールのような部屋で聴くにはそれも必要だが、私のように2m以内のニアフィ

 ールドで聴く分には、このスピーカーが最高峰ともいえるのニャ」

ミケ「師匠の知っている狭い範囲でのことですよね」

ジル「ただ、このスピーカーを購入したものの、本来高能率スピーカー用である極細の

 スピーカーケーブルを使用したり、パワーのない真空管アンプを接続してみたり、試

 行錯誤したあげく、鳴らないという結果になったレヴューを多々見かけるので、どう

 なるか試してみたかったのニャ」

ミケ「このスピーカー15万円程度ですよね」

ジル「そうニャ」

ミケ「普通、スピーカーに最もお金をかけるものだとすれば、スピーカー以外に100万

 円もの出費をするでしょうか?」

ジル「普通の感覚では中古のスピーカーに75000円を出費することも馬鹿げているだろ

 う。音楽鑑賞が生きがいとでもいうなら、異次元が垣間見えるのでどうか?とでもい

 うべきか。スピーカーを含めて50万円以下で、音楽の質をキープシステムも構築でき

 ないか、あれこれ物色している。いずれにしても贅沢な趣味だと言えるが……ただ音

 源については、私がよく利用するレンタルCDでも素晴らしい音楽を聴かせてくれ

 る。近頃CD離れが進んでいるが、音質についてはハイレゾ配信音源>CD>一般配信

 音源となるので、交響曲を聴く場合などは考える必要があるのニャ」

ミケ「昔の音源をリマスターしたハイレゾ音源が、そんなにいいんですか?」

ジル「1960年初頭から1970年代末までのリマスターハイレゾ音源については、確かに

 素晴らしいものが多い。しかし、1980年以降のものから1990年中頃までのものにつ

 いては、デジタル録音の精度のが悪く、あまり効果が感じられないニャ」